40代から手に職をつけることは十分に可能ですが、結果を分けるのは年齢や努力の量ではなく、これまでの経験とつながる分野を選べるかどうかです。たとえば、人手不足の現場系の職種と希望者が多いデスクワーク系の職種とでは、採用のされやすさが大きく異なります。
運営者自身も、建築会社を休職したあとに技能を身につけ、現在はフリーランスとして働いています。
この記事では公的データをもとに、40代男性が長く続けられる技能の選び方を整理します。
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※本記事の統計・制度は2026年10月24日時点で各公式サイトを確認した内容です。最新情報は必ず各公式サイトでご確認ください。
1.【結論】40代男性が手に職をつけるのは遅くない

40代の転職には厳しい面もありますが、データを見ると転職で条件を上げている人も多くいます。まずは「厳しい」といわれる理由と、実際の数字を確認します。
(1)40代男性の転職が厳しいと言われる理由と、手に職で評価が変わる現実
40代の転職が厳しいといわれる理由は、主に次の2つです。
- 即戦力としての経験やマネジメント力を求められやすい
- 未経験の職種では、育成期間を見込める若手と比べられやすい
一方で、転職によって賃金が上がった40代も少なくありません。厚生労働省「令和7年雇用動向調査」によると、40〜44歳の転職入職者のうち、賃金が増えた人は44.9%で、減った人の27.4%を上回ります。45〜49歳でも、増えた人が41.1%、減った人が30.1%です。
※男女計の数値です。
40代前半・後半ともに、賃金が増えた人の割合が減った人を上回っています。1割以上増えた人も、どちらの年代でも約3割います。つまり、40代の転職は、一律に条件が下がるわけではありません。
差が出やすいのは、これまでの経験を次の仕事の評価材料にできるかどうかです。
本記事では、資格・技能・実務経験のいずれかが、転職や年齢を重ねた後の再就職で評価材料になる状態を「手に職がついている状態」と定義します。
この定義で見ると、「すぐに就ける仕事」と「手に職になる仕事」は分けて考える必要があります。
| 比較項目 | すぐに就ける仕事(警備・清掃・軽作業など) | 手に職になる仕事(電気工事・整備・施工管理など) |
| 入りやすさ | 資格なし・未経験でも採用されやすい | 未経験採用もあるが、資格を求められる場面が多い |
| 技能の蓄積 | 経験を積んでも、転職時の評価材料になりにくい | 資格と実務経験が積み上がり、転職時の評価材料になる |
| 年齢を重ねた後の選択肢 | 同じ職場で経験年数を重ねる形になりやすい | 管理・指導・点検など、体力負担の少ない役割に移りやすい |
すぐに就ける仕事にも役割があります。収入をつなぎながら資格の勉強を進める期間の仕事として使えば、手に職をつけるまでの土台になります。
(2)40代・未経験でも採用されやすいのは、人手不足で技能を重視する職種
職種ごとの採用されやすさは、有効求人倍率で比べられます。
有効求人倍率は、仕事を探している人1人あたりに何件の求人があるかを示す数字で、1倍を上回るほど人手が足りない状態です。厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」で、主な職種の数値を確認しました。
| 職種 | 有効求人倍率(令和7年度) | 平均年齢 |
| 建設・土木作業員 | 9.67倍 | 46.7歳 |
| 建築施工管理技術者 | 8.62倍 | 43.4歳 |
| 自動車整備士 | 5.46倍 | 40.6歳 |
| 電気工事士 | 3.84倍 | 41.6歳 |
| CADオペレーター | 0.77倍 | 41.5歳 |
| 行政書士 | 0.39倍 | 41.7歳 |
| Webデザイナー(Web制作会社) | 0.11倍 | 39.1歳 |
※出典:job tag(厚生労働省)「建設・土木作業員」/「建築施工管理技術者」/「自動車整備士」/「電気工事士」/「CADオペレーター」/「行政書士」/「Webデザイナー(Web制作会社)」
現場で技能を使う職種は軒並み倍率が高く、建設・土木作業員は9倍を超えています。一方で、在宅やデスクワークのイメージがあるWebデザイナーや行政書士は、1倍を大きく下回ります。
人手が足りない職種ほど、採用側が応募者を選ぶ余裕は小さくなります。資格と実務経験を積める職種を選べば、40代でも選考の土俵に乗りやすくなります。
どの職種も平均年齢は40歳前後から40代後半で、40代という年齢そのものが職場で浮く心配は小さいといえます。
2.40代男性が手に職をつけられる仕事10選
ここからは、40代男性が手に職をつけやすい10職種を紹介します。まずは一覧表で需要の大きさと向いている人を確認し、気になる職種の詳細を読み進めてください。
| 職種 | 有効求人倍率(令和7年度) | 向いている人 |
| 電気工事士・電気設備 | 3.84倍 | 資格を武器に現場で働きたい人 |
| ビルメンテナンス(設備管理) | 1.03倍 | 体力負担を抑えて長く働きたい人 |
| 建設職人・施工管理 | 9.67倍(作業員)/8.62倍(施工管理) | 将来は管理側に回りたい人 |
| 機械整備・自動車整備 | 5.46倍(自動車整備士) | 働きながら資格を取りたい人 |
| 溶接・機械加工 | 2.67倍(溶接工) | 製造業の経験を活かしたい人 |
| CAD・建築設計 | 0.77倍 | デスクワークで黙々と作業したい人 |
| 大型・中型ドライバー | 2.94倍(トラックドライバー) | 一人で過ごす時間が長い仕事をしたい人 |
| 介護職 | 2.96倍(施設介護員) | 無資格から段階的に資格を積みたい人 |
| IT・Web制作 | 0.11倍(Webデザイナー) | 在宅や独立も視野に入れたい人 |
| 士業・不動産系資格 | 2.72倍(住宅・不動産営業)/0.39倍(行政書士) | 営業・事務の経験を活かしたい人 |
※出典:job tag(厚生労働省)各職業の詳細ページ。職種ごとの出典は各項目に記載しています。
※各職種の図にある「体力負担」「一人で進める作業」は、job tagに掲載された仕事内容をもとにした編集部の目安です。
(1)電気工事士・電気設備|有効求人倍率3.84倍の業務独占資格
電気工事士は、住宅やビル、工場などの電気配線や、照明・コンセントの工事を行う仕事です。資格がないと担当できない作業があるため、資格がそのまま仕事の価値になります。

第二種電気工事士の試験は、学科試験に合格すると技能試験に進みます。技能試験では、支給された材料と持参した工具で、配線図どおりに作業を完成させる実技が課されます。
公共職業訓練でも学ぶことができ、電気関連分野の施設内訓練の就職率は86.2%(令和6年度速報値)です。
※出典:job tag(厚生労働省)「電気工事士」、電気技術者試験センター「第二種電気工事士の試験概要」、電気技術者試験センター「受験資格はありますか?」、厚生労働省「ハロートレーニング(公的職業訓練)の実施状況(詳細版)」
(2)ビルメンテナンス(設備管理)|年齢を重ねても続けやすい設備の仕事
ビルメンテナンスは、オフィスビルや商業施設の電気・空調・給排水・ボイラーといった設備を点検・管理する仕事です。監視や点検が中心で体力負担が比較的小さく、年齢を重ねても続けやすい点が40代にとっての利点です。

有効求人倍率は1.03倍で、建設や整備ほどの人手不足ではありません。中途採用では資格の所持が求人の条件になることが多いとされているため、未経験で応募するなら資格を先に取っておくことが選考の前提になります。
(3)建設職人・施工管理|求人倍率8倍超、経験を積めば管理側に移れる
建設業は、job tagに掲載されている職種の中でも人手不足が目立つ分野です。
建設・土木作業員は入職時に学歴や資格を特に必要とされず、他の産業からの転職者も受け入れています。

現場作業は体力負担が大きいため、40代から始める場合は、年齢を重ねた後に施工管理へ移る道を最初から描いておくことが大切です。
2級建築施工管理技士の第一次検定は、受検年度末時点で17歳以上であれば受検できます。第一次検定に合格した後、3年以上の実務経験を積むと第二次検定を受けられます(令和6年度からの新しい受検資格)。建築施工管理技術者の平均年収は679.1万円で、現場で積んだ経験が収入に反映されやすい職種です。
運営者の体験記
40代で未経験入職した人は、現場での経験や資格の有無によって、任される仕事や待遇に違いがありました。施工管理技士や玉掛けなどの資格を持つ人は、担当できる業務の幅が広がり、資格手当が支給される場合もあります。
一方、体力面で現場作業を続けることが難しくなり、施工管理などの管理側へ移る人もいました。
※出典:job tag(厚生労働省)「建設・土木作業員」、job tag(厚生労働省)「建築施工管理技術者」、国土交通省「令和6年度より施工管理技術検定の受検資格が変わります」
(4)機械整備・自動車整備|未経験で入って働きながら資格を取れる
自動車整備士の国家資格は応募時に有利になるものの、資格がなくても採用される場合があります。車や機械に触れてきた製造業・運送業の経験がある人は、部品や構造の知識を活かしやすい職種です。

資格を持たずに入職した場合は、整備工場で働きながら、夜間や休日に6か月〜1年半ほど講習所に通って資格を取得するルートがあります。収入を止めずに資格を目指せるため、家計の事情で長く休めない40代にも現実的な選択肢です。
(5)溶接・機械加工(CNC)|製造業の経験を活かしやすい技能職
アーク溶接やガス溶接の作業には、法律で定められた講習の修了が必要です。金属加工や組立など製造業の現場経験がある人は、図面の読み方や品質への意識を評価材料にできます。

公共職業訓練の施設内訓練の就職率は、金属関連分野が88.2%、機械関連分野が82.9%(いずれも令和6年度速報値)です。金属関連分野の委託訓練は50.0%で対象者も少ないため、職業訓練経由での就職をめざすならポリテクセンターなどの施設内訓練を優先して探すのが合理的です。
※出典:job tag(厚生労働省)「溶接工」、厚生労働省「ハロートレーニング(公的職業訓練)の実施状況(詳細版)」
(6)CAD・建築設計|体力負担が小さく一人で進める作業が多い
CADオペレーターは、パソコンで図面を作成・修正する時間が大半を占める仕事です。体力負担が小さく、黙々と作業に集中したい人に向いています。

有効求人倍率は1倍を下回るため、CADの操作だけでは選ばれにくく、前職の経験と組み合わせて応募先を絞ることが前提です。製造業なら機械CAD、建設業なら建築・設備CADというように、経験とつながる分野を選びましょう。
スクールの選び方や職業訓練との違いは、次の記事で詳しく解説しています。
関連記事:「【40代】CADスクールの就職支援を比較|求人倍率0.77の現実から逆算するおすすめ校と選び方」
(7)大型・中型ドライバー|免許が技能になり、運転中は一人の時間が長い
トラックドライバーは、今回取り上げた職種の中で最も平均年齢が高く、40代は若手の部類に入ります。上位の免許そのものが技能の証明になり、運転中は一人で過ごす時間が長いため、対人調整で消耗してきた人には向いている場合があります。

厚生労働省のポータルサイトによると、道路貨物運送業の就業者は45〜59歳が45.0%を占めており、若い担い手が少ない分、40代でも戦力として迎えられやすい業界です。
ただし、労働時間は全産業平均の2,076時間を上回っており、業界の構造として拘束時間が長くなりやすい点は押さえておく必要があります。
給与は大型のほうが約60万円高く、上位の免許が収入面でも評価につながっていることがうかがえます。
さらに2024年4月からは、トラック運転者に年960時間の時間外労働の上限が適用されており、業界の構造改革が進められています。国土交通省は、バラ積み・バラ降ろしからパレットの利用に切り替えて荷役時間を短縮する取り組みや、自動運転などの物流DXを推進しており、職場環境の改善が期待されています。
長時間労働のイメージが強い職種ですが、自分に合う企業を選べば長く働きながら運行管理などへキャリアを広げることもできます。応募の際は、1日の拘束時間や荷役作業の有無を求人票や面接で確認しましょう。
※出典:job tag(厚生労働省)「トラックドライバー」、厚生労働省「統計からみるトラック運転者の仕事」、厚生労働省「2024年4月の改正『改善基準告示』適用で自動車運転者の働き方が変わる」、国土交通省「物流を取り巻く動向と物流施策の現状・課題」
(8)介護職|無資格から段階的に資格を積み上げられる
介護職は、入職に特定の資格が必須ではなく、無資格・未経験から働き始められる仕事です。働きながら、介護職員初任者研修、実務者研修、介護福祉士と段階的に資格を積み上げられるのが特徴です。

公共職業訓練の介護・医療・福祉分野は、施設内訓練84.9%、委託訓練83.4%(令和6年度速報値)と、委託訓練でも就職率が高い分野です。
介護の仕事にはストレスが多いという印象を持たれがちですが、厚生労働省「令和6年労働安全衛生調査(実態調査)」によると、仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスがあると答えた人は、介護サービス・保健医療サービス職業従事者で66.9%でした。労働者全体の68.3%とほぼ同じ水準で、介護職だけが突出してストレスを抱えやすいわけではありません。
ストレスの内容を見ると、「仕事の量」が27.3%、「仕事の失敗、責任の発生等」が26.4%、「仕事の質」が25.8%と上位を占めます。一方で「対人関係(セクハラ・パワハラを含む。)」は10.0%で、労働者全体の17.8%を下回っています。ストレスの中心は人間関係よりも、業務量と責任の重さにあるといえます。
なお、産業別に見ると医療,福祉の業種に従事する人のうちストレスがあると回答した人の割合は84.6%と高い水準です。医療職を含む業界全体で負担を感じる人が多いことは押さえておき、職場ごとの差も大きいと考えておきましょう。
応募前には、人員配置や夜勤の回数を確認しておくことが大切です。
加えて、施設介護員の平均年収は388万円で、今回取り上げた職種の中では低めです。入浴や移乗の介助など体力を使う場面があり、利用者や同僚と関わる時間も長いため、協調性が求められる点も理解したうえで選びましょう。
※出典:job tag(厚生労働省)「施設介護員」、社会福祉振興・試験センター「介護福祉士国家試験 受験資格」、厚生労働省「ハロートレーニング(公的職業訓練)の実施状況(詳細版)」、厚生労働省「令和6年労働安全衛生調査(実態調査)」個人調査 第1表(e-Stat)
(9)IT・Web制作(AI活用を含む)|求人倍率は低いが、在宅・単独作業と相性が良い
Web制作は在宅や単独で進めやすい仕事ですが、今回取り上げた職種の中で有効求人倍率が最も低く、未経験の40代が会社員として採用されるハードルは高いのが現実です。

job tagでも、実績を積んでフリーランスになる場合もあると紹介されています。会社に雇われる道だけでなく、副業や業務委託で小さな実績をつくり、仕事を受ける道もあります。前職の業界知識を活かし、製造業や建設業の会社のWebサイト制作を得意分野にする方法も考えられます。
最近は、生成AIを使って業務を効率化するスキルも求められています。Web制作の基礎とあわせてAIの活用を学んでおくと、前職の業務改善にも活かせます。
※出典:job tag(厚生労働省)「Webデザイナー(Web制作会社)」
運営者の体験:休職中に独学でWeb制作を学び、フリーランスになるまで
運営者は30代後半から、休職中に独学でWeb制作の勉強を始めました。その後、オンラインスクールで学び、職業訓練も受講しています。
学習にはそれぞれ期間と費用がかかり、すぐに仕事につながったわけではありません。それでも学習を続け、初めての案件を獲得し、フリーランスとして働くようになりました。
(10)士業・不動産系資格(宅建士・行政書士)|営業・事務の経験とつなげて使う
営業職や事務職の経験がある人には、宅地建物取引士(宅建士)や行政書士といった資格も選択肢になります。どちらも、資格をどう仕事につなげるかを先に考えておくことが大切です。

不動産会社の事務所には、業務に従事する人5人に1人以上の割合で専任の宅建士を置く必要があり、契約前の重要事項の説明も宅建士が行います。資格がそのまま業務の担い手としての価値になるため、営業経験と組み合わせて評価されやすい資格です。
行政書士は雇われる形の求人が少なく、事務所で経験を積んでから独立するケースが一般的です。資格を取ってすぐに独立して生計を立てるのは難しいため、勤務で経験を積む期間を見込んでおくことが求められます。
※出典:job tag(厚生労働省)「住宅・不動産営業」、job tag(厚生労働省)「行政書士」
資格選びの考え方は、次の記事で詳しく解説しています。
関連記事:「40代からの人生やり直しは遅いのか?再出発の7ステップと資格の選び方」
3.40代から一生できる仕事を選ぶ2つの鉄則

職種の候補を絞ったら、次の2つの鉄則で、その仕事を一生続けられるかを確かめます。どちらも一覧表の数字だけでは判断しにくく、40代の転職で結果を分けるポイントです。
(1)前職の経験とつながる職種を選ぶ
40代の転職で評価されやすいのは、前職の経験を次の仕事の評価材料にできる人です。
まったく関係のない分野を選ぶと、育成期間を見込める若手と同じ土俵で比べられることになります。前職と新しい仕事のつながりは、次の表を目安に考えてみてください。
| 前職の経験 | つながりやすい職種 | 評価材料になる経験 |
| 製造業(加工・組立・保全) | 溶接・機械加工、ビルメンテナンス、CAD(機械) | ・機械の構造や図面の理解 ・品質管理の経験 |
| 建設業(現場作業・施工管理) | 電気工事、施工管理、CAD(建築・設備) | ・現場の段取りや安全管理 ・施工図の理解 |
| 営業職 | 宅建士(不動産営業)、IT・Web制作 | ・顧客の要望を聞き取る力 ・提案の経験 |
| 運転・配送 | 大型・中型ドライバー、自動車整備 | ・運転経験 ・車両の扱いと日常点検の知識 |
| 接客・販売 | 介護職 | ・相手の状況に合わせた対応の経験 |
家計の事情で収入を長く止められない場合は、働きながら取れる資格か、未経験採用で現場に入れる職種を優先しましょう。
自動車整備士や介護職のように入職後に資格を取れる職種であれば、収入が途切れる期間を最小限にできます。
(2)負担が自分に合うかを確かめる
一生続けられる仕事かどうかは、仕事内容だけでなく、毎日の負担が自分に合うかどうかで決まります。とくに40代は家族状況や健康状態が変化しやすい年代であり、年齢を重ねても無理なく続けられるかという視点が欠かせません。確認したいのは次の3つの負担です。
| 負担の種類 | 確認するポイント |
| 体力の負担 | 重い物の運搬や立ち仕事の多さ、年齢を重ねた後に管理や点検の役割へ移れるか |
| 時間の負担 | 1日の拘束時間、夜勤や深夜業務の有無 |
| 人付き合いの負担 | 一人で進める作業の比率、チームや顧客とのやり取りの多さ |
体力と時間の負担は、職種ごとの差がはっきり出ます。
たとえば建設の現場作業は体力負担が大きく、トラックドライバーは年間労働時間が全産業平均より長めです。また、全職種で見ても、深夜業務がある人は強い不安やストレスを感じる割合が76.9%と、ない人の65.6%を上回っています。
※出典:厚生労働省「令和6年労働安全衛生調査(実態調査)」個人調査 第1表(e-Stat)
人付き合いの負担は、組織に馴染みにくいと感じてきた人にとって、職場選びの重要な判断材料になります。CAD、ドライバー、ビルメンテナンスの監視業務は一人で進める時間が比較的長く、介護職は人と関わる時間が長い仕事です。
ただし、「人付き合いが苦手だから職人になる」と単純に考えるのは避けましょう。
職人の世界にも、親方や先輩との上下関係、現場ごとの人間関係があります。仕事内容だけでなく、誰とどのように働くかまで、求人票や面接で確認することが大切です。
組織に馴染めない性質を、仕事に活かせる素質として捉え直したい場合は、次の記事も参考にしてください。
関連記事:「組織に馴染めない人に向いている仕事|特性を強みに変える選び方と消耗しない働き方」
4.40代から一生できる仕事につくための手順

40代の転職では、勢いで退職してから動き出すと、収入が途切れる焦りから条件の合わない求人に応募しがちです。
ここでは、収入を保ちながら一生続けられる仕事に移るための手順を、取り組む順番に紹介します。
(1)職歴を棚卸しして「持ち運べる経験」を書き出す
最初にやるべきことは、求人を探すことではなく、これまでの仕事で身につけた経験を書き出すことです。40代の転職では、前職の経験を新しい仕事の評価材料にできるかどうかで結果が変わります。
棚卸しでは、職種名や役職ではなく、「何を扱い、何ができるか」まで分解するのがコツです。次の項目に沿って書き出してみてください。
| 書き出す項目 | 書き方の例 |
| 扱ってきた機械・設備・道具 | フォークリフト、NC旋盤、電動工具、CADソフト |
| 段取り・管理の経験 | 作業工程の調整、安全管理、新人への指導 |
| 数字で示せる実績 | 不良率の改善、担当した現場の数、無事故の年数 |
| 人との関わり方 | 顧客対応の有無、チームの人数、一人で進める作業の割合 |
| 保有している資格・免許 | 普通自動車免許、フォークリフト運転技能講習 |
書き出した内容は、厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」の「キャリア分析」や「ポータブルスキル見える化ツール」に入力すると、経験した職業のスキルと希望する職業のスキルを比べたり、経験を活かせる職務を探したりできます。無料で使えるため、話すより書くほうが整理しやすい人にも向いています。
job tagとあわせて、スマホで手軽に「自分の経歴でどんな職種が選べるか」「期待できる年収はどのくらいか」を確かめたい人は、AIキャリア診断を使う方法もあります。紹介される求人は正社員のみなので、正社員として長く働ける職場を探したい人に向いています。

(2)収入が途切れない移行プランを立てる
次に、学ぶ期間の収入をどう確保するかを決めます。在職中か離職中かで、使える制度と進め方が変わります。
| 制度 | 主な対象 | 支援の内容 | 手続きのタイミング |
| リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業 | 在職中で、雇用主の変更を伴う転職を目指す人 | 講座修了で受講費用(税別)の1/2(上限40万円)、転職後1年の継続就業で1/5を追加(上限16万円) | 登録時と初回面談時に在職中であること |
| 教育訓練給付制度 | 雇用保険の加入期間などの要件を満たす在職者・離職後1年以内の人 | 受講費用の20〜80%(訓練の種類と条件で異なる) | 講座の種類によっては受講開始前の手続きが必要 |
| 公共職業訓練(ハロートレーニング) | 雇用保険を受給中の離職者 | 受講料無料、受講指示を受ければ訓練終了まで基本手当を延長、受講手当・通所手当 | 受講前にハローワークで相談 |
| 求職者支援訓練 | 雇用保険を受給できない人 | 受講料無料、要件を満たせば職業訓練受講給付金(月10万円) | 受講前にハローワークで相談 |
移行中の生活費は、「毎月の支出×学習と転職活動にかかる月数」で試算し、足りない分を制度でどこまで補えるかを確かめておきましょう。お金の見通しが立っていれば、焦って条件の合わない求人に飛びつかずに済みます。
運営者の体験記
学習期間中は、生活費の見通しを立てながら、技能の習得と仕事探しを進める必要がありました。実際に職業訓練制度を利用した経験から、学び直しを始める前に利用できる支援制度を確認しておくことが大切だと感じています。
また、一定の条件を満たす人は、厚生労働大臣が指定する講座を受講することで、受講費用の一部が支給される「教育訓練給付制度」も利用できます。
①在職中ならリスキリング支援事業や教育訓練給付制度の対象講座を活用する
在職中なら、退職する前に学び始めるのが基本です。
働きながら資格の勉強を進め、リスキリング支援事業や教育訓練給付制度の対象講座で受講費用の補助を受けましょう。リスキリング支援事業は、すでに退職している人は対象外になるため、退職前に登録しておく必要があります。
※出典:経済産業省「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」、ハローワークインターネットサービス「教育訓練給付制度」
②離職中ならハローワークで職業訓練の受講指示を受ける
離職中なら、まずハローワークで職業相談を受けましょう。
再就職のために訓練が必要と認められて受講の指示を受けると、訓練期間中に所定給付日数が終わっても、訓練が終わる日まで基本手当が支給されます。また、自己都合で退職した場合の給付制限は、退職日が令和7年4月1日以降なら原則1か月で、教育訓練等を受けた場合は給付制限が解除されます。
※出典:ハローワークインターネットサービス「基本手当について」、厚生労働省「令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます」
(3)退職する前に小さく試す
仕事を辞める前に、候補の職種が自分に合うかを小さく試しておくと、転職後のミスマッチを防げます。体力や人付き合いの負担が合うかどうかは、実際に体験してはじめてわかることも少なくありません。
| 試す方法 | 具体的な内容 |
| 資格の学科試験を先に受ける | 第二種電気工事士は学科試験に合格すれば、次回と次々回の試験では学科が免除される |
| 職業訓練施設の見学会や説明会に参加する | 実習の様子や設備を見て、作業環境が合うかを確かめる |
| 短期の講習を受ける | アーク溶接など、法律で定められた講習を受けて実際の作業を体験する |
| 副業で小さく受注する | 就業規則で副業が認められていれば、Web制作など在宅でできる仕事で実績をつくる |
試してみて「合わない」とわかることにも意味があります。候補を一つ消せれば、残りの選択肢に時間とお金を集中できます。
※出典:電気技術者試験センター「第二種電気工事士の試験概要」、job tag(厚生労働省)「溶接工」
(4)応募書類と面接で「経験×技能」を伝える
応募書類では取った資格だけでなく、前職で何をしてきたかと、それが新しい仕事でどう役立つかをセットで示します。棚卸しで書き出した内容を、次のように言い換えてみてください。
| 前職→転職先 | 前職で積んだ経験 | 新しい仕事での活かし方 |
| 製造業(設備保全)→電気工事士 | 工場設備の保全、電気系統のトラブル対応 | 施工後の点検、不具合の原因特定 |
| 工場の生産ライン→ビルメンテナンス | 機械の日常点検、点検記録の作成 | 建物設備の巡回点検、異常の早期発見と報告 |
| 建設現場の作業員→施工管理 | 各工程の段取り、職人どうしの連携 | 職人への指示、工程の調整 |
| 製造業(組立)→自動車整備 | 手順書どおりの組付け、部品の品質確認 | 分解・組付け作業の正確さ、整備記録の作成 |
| 製造業(品質管理)→溶接・機械加工 | 図面の読み取り、寸法検査 | 図面どおりの加工、加工品の精度確認 |
| 住宅・建材の営業→CAD・建築設計 | 図面を見ながらの顧客との打ち合わせ | 修正依頼の意図をくみ取った作図 |
| ルート営業→大型・中型ドライバー | 社用車での巡回、納品先との時間調整 | 配送ルートの組み立て、荷主・納品先との連絡 |
| 接客・販売→介護職 | 幅広い年代の顧客対応、クレーム対応 | 利用者や家族との会話、要望の聞き取り |
| 事務職→IT・Web制作 | Excelの関数やマクロによる業務の効率化 | 業務の流れを理解したうえでのサイトやツールの制作 |
| 法人営業→宅建士(不動産業界) | 顧客の要望の聞き取り、条件の調整 | 物件の提案、重要事項の説明 |
| 総務・法務事務→行政書士 | 契約書や社内規程の作成、官公庁への届出 | 許認可の申請書類の作成、依頼者への手続きの説明 |
面接で話すのが苦手な人は、想定される質問への回答をあらかじめ文章にしておくと、その場で言葉を探す負担を減らせます。ハローワークでは、履歴書や職務経歴書の書き方、面接の受け方について助言を受けられるため、書いた回答を見てもらうのもひとつの方法です。
※出典:青森労働局「応募書類の書き方、面接の受け方について」
5.正社員経験や資格がない40代男性でも手に職をつけられるか?

正社員として働いた経験や資格がなくても、40代から手に職をつけることはできます。人手不足の職種には未経験から育てる求人があり、国も正社員経験が少ない中高年の就職を制度で後押ししています。
職歴の弱さは、個人の努力不足ではなく入口の選び方で補える課題です。一人で求人を探し続けるより、使える制度を組み合わせて入口を広げるほうが近道です。
(1)未経験歓迎の求人に入り、働きながら資格と実務経験を積む
資格を取ってから応募しようとすると、勉強期間中の収入が途切れ、就職までに時間がかかります。正社員経験や資格がない人は、まず未経験歓迎の求人に入り、働きながら資格と実務経験を積む順番で考えましょう。
アルバイトや派遣で担ってきた仕事も、職歴として書き出せます。接客で身につけた対応力や、倉庫・工場での作業経験は、応募書類に具体的に書き出せば評価の材料になります。
求人票では、次の4点を確認しておくと、入社後に技能を身につけやすい職場を選べます。
- 「未経験歓迎」「経験不問」の記載があるか
- 資格取得支援制度(受験料や講習費の会社負担)があるか
- 先輩について仕事を覚える研修やOJTの内容が書かれているか
- 契約社員からのスタートなら、正社員登用制度と登用の実績があるか
働きながら取った資格と現場での経験がそろえば、次の転職では「経験者」として応募できるようになります。
(2)雇用保険を受給できなくても、求職者支援訓練で学べる
雇用保険に加入していなかった人や、失業給付の受給が終わった人でも、求職者支援訓練なら原則無料で職業訓練を受けられます(テキスト代は自己負担)。訓練期間は2〜6か月で、一定以下の収入でパートタイム勤務をしながら正社員を目指す人も対象です。
本人収入が月8万円以下、世帯全体の収入が月30万円以下、世帯全体の金融資産が300万円以下などの要件を満たせば、月10万円の職業訓練受講手当に加えて、通所手当(月上限42,500円)も受け取れます。ただし、給付金を受けるには訓練実施日のすべてに出席するのが原則で、やむを得ない欠席を証明できる場合でも8割以上の出席が必要です。
受講するには、ハローワークで制度の説明と職業相談を受けてコースを選び、受講を申し込みます。訓練実施機関の面接や筆記による選考に合格すると、受講が始まります。受講中から訓練終了後3か月までは、原則として月1回ハローワークで職業相談を受けるため、訓練から就職まで続けて支援を受けられます。
※出典:厚生労働省「求職者支援制度のご案内」、厚生労働省「ハロートレーニングについて知る」
(3)正社員経験が少ない人向けの採用制度を、ミドルシニア専門窓口で活用する
正社員経験がないことによる書類選考への不安は、制度を知ることで具体的な対策に変えられます。国には、正社員経験が少ない中高年を採用する企業を支援する制度があり、ハローワークの紹介を通じて活用されています。
| 制度 | 支援の内容 | 求職者にとってのメリット |
| 特定求職者雇用開発助成金(中高年層安定雇用支援コース) | 35歳以上60歳未満で、過去5年間に正規雇用された期間が通算1年以下の人を、ハローワーク等の紹介で正社員として雇った企業に、1人あたり最大60万円(中小企業)を支給 | 正社員経験の少なさが、企業にとって採用の後押しになる |
| トライアル雇用助成金(一般トライアルコース) | 無期雇用への移行を前提に、原則3か月の試行雇用を行う企業に、1人あたり月額最大4万円を支給 | 職歴だけでなく、実際の働きぶりで判断してもらえる |
| ミドルシニア専門窓口 | 就職氷河期世代を含む中高年層を対象に、全国の主要なハローワークで職業相談や職業紹介を実施 | 制度の対象になる求人の紹介や、応募書類の添削を受けられる |
どちらの助成金も、受け取るのは採用した企業で、求職者本人に支給されるお金ではありません。また、対象になるにはハローワーク等の紹介を受けて応募する必要があるため、求人サイトから直接応募すると制度を活かせない場合があります。
まずはミドルシニア専門窓口で、正社員経験がないことも含めて現状を相談しましょう。担当者による個別支援を受けていることは、トライアル雇用の対象になる要件のひとつにもなっています。
※出典:厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(中高年層安定雇用支援コース)」、厚生労働省「トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)」、厚生労働省「中高年層(ミドルシニア)専門窓口」、厚生労働省「中高年の活躍支援のご案内」
6.40代男性が手に職をつけるときのよくある質問
(1)家族に反対されたときはどう説明すればよいですか?
不安の中身を数字で示すと、話し合いが進みやすくなります。
資格の取得にかかる期間、その間の収入の見通し、うまくいかなかった場合に戻れる仕事の3点を紙にまとめて説明しましょう。在職中に勉強を始め、資格を取ってから転職する計画であれば、収入が途切れないことも伝えやすくなります。
(2)技術習得後に独立やフリーランスは目指せますか?
目指せますが、先に会社員として実務経験を積む期間が必要になる職種が多くあります。たとえば電気工事業を営むには、営業所ごとに主任電気工事士を置いて登録を受ける必要があり、第二種電気工事士の場合は免状の取得後に3年以上の実務経験が求められます。行政書士も、事務所で経験を積んでから独立するケースが多いとされています。
※出典:愛知県「登録電気工事業者の新規登録について」、job tag(厚生労働省)「行政書士」
(3)50代になってからでも同じ選び方でよいですか?
考え方は同じですが、50代では体力負担と、年齢を重ねた後の移り先をよりシビアに見積もる必要があります。
現場作業から入る場合は、管理や点検など体力負担の少ない役割に移れる見通しのある職種を選びましょう。ビルメンテナンス(平均年齢47.3歳)やトラックドライバー(51.5歳)のように平均年齢が高めの職種は、50代でも職場で年齢が浮きにくい職種です。
7.まとめ
40代から手に職をつけるときに大切なのは、これまでの経験とつながる職種を選び、収入を止めない習得ルートを決めることです。明日からできる最初の一歩は次の3つです。
- これまでの職歴を書き出し、つながる職種を2つ選ぶ
- 候補職種の地域求人を、ハローワークインターネットサービスで10件読む
- 習得ルートを1つ決め、資格の試験日程かスクール・ハローワークの相談日を予定に入れる
どれも費用をかけずに、今日から取り組める作業です。正社員経験や資格がない場合は、ハローワークのミドルシニア専門窓口で相談する日を予定に入れるところから始めましょう。
