休職中の40代がキャリアを立て直すには、回復を最優先にしたうえで、消耗した原因を整理し、そのあとで復職・転職・退職を判断するという順番を守ることが大切です。

運営者自身も30代後半で重度の適応障害により休職し、退職と2回目の休職を経て、現在はフリーランスとして働いています。

この記事では、公的データと制度の公式情報をもとに、休職中の40代が立て直しに向けて判断するための材料を整理します。あわせて、運営者自身が休職から立て直すまでの体験も、参考として添えています。

※本記事は医療的な助言ではありません。体調や療養に関する判断は、必ず主治医にご相談ください。

※本記事の制度の内容は2026年10月時点で各公式サイトを確認した内容です。最新情報は必ず各公式サイトでご確認ください。

1.40代の休職は「終わり」ではない|立て直しの前に知っておく事実

※AI生成によるイメージ画像


休職中に焦りを感じるのは、珍しいことではありません。ここでは、判断の前提となる事実を整理します。

(1)病気休職者の約半数は職場に復帰している

労働政策研究・研修機構(JILPT)の調査では、病気休職制度を利用した人の復職率と退職率が次のように公表されています。

区分復職率退職率
病気休職者全体51.9%37.8%
メンタルヘルス不調による休職者45.9%42.3%

※過去3年間の平均値。2012年11月に常用労働者50人以上の企業を対象に実施された調査

※出典:労働政策研究・研修機構「メンタルヘルス、私傷病などの治療と職業生活の両立支援に関する調査」

メンタルヘルス不調による休職でも、半数近くの人が職場に戻っています。一方で、4割ほどは退職を選んでいます。

つまり、復職も退職も、休職した人の多くがたどる道です。どちらが正解ということはなく、自分に合う道を選ぶための材料をそろえることが立て直しの出発点になります。

(2)休職中は雇用関係と社会保険が維持されている

厚生労働省のモデル就業規則では、休職を「身分を保ったまま一定期間の就労義務を免除する特別な扱い」と説明しています。休職中は会社に在籍しているため、健康保険や厚生年金への加入も続きます。

ただし、休職の定義や期間、復職の条件は労働基準法に定めがなく、会社ごとに就業規則で決められています。また、休職中も健康保険や厚生年金の保険料の本人負担分は発生する点に注意が必要です。

モデル就業規則には、休職期間が満了しても就業が難しい場合は退職とする規定例も示されています。休職できる期間や満了時の扱いは会社によって異なるため、まずは自分の会社の就業規則で、休職期間の上限と復職の条件を確認しておきましょう。

※出典:厚生労働省「モデル就業規則(令和7年12月版)」

(3)40代の休職で焦りが強くなりやすい理由

40代の休職で焦りが強くなりやすいのは、次のような事情が重なるためです。

  • 役職や担当範囲が広く、職場に迷惑をかけている感覚が強い
  • 住宅ローンや教育費など、家計の固定費が大きい
  • 年齢的に、転職市場で不利になるという不安がある
  • 勤続年数が長く、会社を離れた自分を想像しにくい

こうした焦りは、状況が深刻だからではなく、判断材料が足りないことから生まれることが多いものです。休職期間の上限や使える制度、選択肢ごとの進め方がわかれば、焦りは「いつまでに何を決めるか」という具体的な計画に置き換えられます。

運営者の休職体験記

運営者は2022年1月、帰宅した直後に自宅の玄関で失神し、救急搬送されました。搬送先での診断は重度の適応障害でした。当時はローンの返済があり、働かなければ生活ができない状況でした。つまり、心身の不調があっても休職を躊躇う事情がありました。

さらに約10年勤めた会社を辞めることにも、強い抵抗がありました。責任や積み上げた勤続年数、40歳目前という年齢、なんの根拠はなくても「辞めたら次がない」という不安が重くのしかかってました。

(4)立て直しは「回復→整理→選択」の順で進める

厚生労働省の「職場復帰支援の手引き」では、主治医が職場復帰可能と判断したあとに、復帰の可否や支援プランを検討する流れが示されています。本人がキャリアを考えるときも、同じように回復を起点に順番を守ることが大切です。

段階目的主な行動
回復心身を休め、生活を立て直す休養、通院、生活リズムの安定
整理消耗の原因と続けられる条件の言語化原因の書き出し、キャリアの棚卸し
選択復職・転職・退職の判断判断基準の確認、制度・相談先の活用

※出典:厚生労働省 こころの耳「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」

回復しきる前に「選択」へ進んでしまうと、判断の軸が焦りに引っ張られます。ここからは、この順番に沿って段階ごとにやることを解説します。

2.休職中の40代が段階ごとにやること

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休職中にやるべきことは、回復の段階によって変わります。段階の見極めは主治医の判断に従い、ここでは各段階で意識したいことを整理します。

(1)休養期:仕事から離れる時間を確保する

休職に入った直後は、休むこと自体が最優先のやるべきことです。

業務のメールやチャットの通知を切り、会社との連絡は窓口と頻度をあらかじめ人事と決めておきましょう。自分でやり取りするのが難しい場合、頼れるなら家族に任せるのも選択肢の一つです。

この時期は、転職サイトや求人情報を見ることも控えたほうが無難です。回復していない段階で求人を眺めると「この条件では採用されない」といった焦りが強まりやすくなります。

運営者

休むべきとわかっていても仕事のことを考えずにいられないとき、好きなゲームをしたり、動物とふれあうなどで気を逸らしてました。 

(2)回復期:生活リズムを整え、日中の活動量を少しずつ戻す

復職するにしても転職するにしても、決まった時間に起きて日中に活動できることそのものが働くための土台になります。

実際に、厚生労働省の「職場復帰支援の手引き」では、職場復帰の可否を判断する基準の例として、次の項目が挙げられています。

  • 適切な睡眠覚醒リズムが整っている、昼間に眠気がない
  • 決まった勤務日、時間に就労が継続して可能である
  • 作業による疲労が翌日までに十分回復する

出典:厚生労働省・労働者健康安全機構「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」

ただし、休職中に生活を一気に立て直すのは簡単ではありません。まずは次のように、小さな行動から1つずつ始めることで負担を軽減しやすくなります。

  • 起床時刻だけを固定し、就寝時刻は無理に決めない
  • 起きたらカーテンを開けて、朝の光を浴びる
  • 日中に気が向いたら散歩などで短時間の外出をする

このように刺激の少ない内容から取り組むことで、一時的ながんばりに頼らない体制の構築につながります。なおこの回復期はタイミングによって体調がバラバラなため、調子の良い日にできていたことがある瞬間にできなくても自分を責めないことも重要です。

運営者の休職体験記 

運営者は、休職中に頭痛や倦怠感などの直接的な症状が落ち着いてきたら夫婦で温泉めぐりをしながら、心身を休める時間を大切にしていました。
ここで意識して無理ない範囲で温泉やおいしい食事を楽しむ機会をつくっていたものの、結果としてこれらは新しい趣味になり、いまの生活でのモチベーションにつながってます。

また、自宅では主に家事を担当することで体内リズムを調整しつつ、仕事のことばかり考えなくても済む状態にできました。

(3)整理期:消耗した原因を4つに分けて書き出す

体調が安定してきたら休職に至るまでを思い返して、どのようなことに消耗したのかを具体的に書き出します。ポイントは、原因を次の4つに分けることです。

分類例社内で調整できる可能性
業務量長時間労働、担当範囲の過多業務調整・人員配置で改善の余地あり
人間関係特定の上司との関係、部署間の板挟み配置転換で改善の余地あり
働き方(組織への適応)会議や調整業務の多さ、評価の仕組み社内では改善しにくい
自分の特性刺激への疲れやすさ、頼まれると断れない環境選びと対処法で補える

分けて書き出すと、職場を変えれば解決するのか、働き方そのものを変える必要があるのかが見えてきます。

ここでみえてきたことは反省ではなく、自分の特性を仕事に活かすために利用します。

たとえば、人間関係での消耗が多かった場合は「人付き合いが苦手な自分を直す」と考える必要はありません。関わる人の数が少ない仕事や、やり取りがチャットや書面で完結する職場を選べば、同じ消耗を避けられます。

休職から退職を選択する場合でも、同じように「次の仕事で重視したい条件」に置き換えられます。

消耗の傾向次の仕事で重視したい条件
業務量担当範囲が明確、仕事量を自分で調整できる
人間関係関わる人が少ない、指示系統が明確、やり取りが文字中心
働き方(組織への適応)会議や社内調整が少ない、成果で評価される
自分の特性静かな環境で働ける、在宅勤務ができる、断りやすい契約形態

ここで書き出した条件は、仕事を続けられる条件を言語化するときにそのまま使えます。

なお、自分の特性を仕事に活かす考え方は、次の記事で解説しています。

関連記事:「組織に馴染めない人に向いている仕事|特性を強みに変える選び方と消耗しない働き方」

運営者の休職体験記 

運営者の場合、拘束時間が15時間以上に匹敵する長時間労働に加え、現場と経営側の間に立つ立場でした。多くの業務や責任が1人に集中することから、今思えば構造的な欠陥がありました。しかし当時はそれをやる以外に選択肢はないと感じていました。

さらに業務量の多さだけでなく、現場の取引先と同僚、それから経営側の板挟みになる人間関係や、管理職として求められる調整業務も心身に負担がかかる要因となってました。

こうした経験から、職場を変えるだけでなく、業務内容や人との関わり方を含め、自分が無理なく続けられる働き方を考えるようになりました。

(4)整理期:キャリアを棚卸しし、続けられる条件を言語化する

休職中に働き方を考えるときは、「できること×続けられる条件」から考えるほうが現実的です。もし目立った実績がなくても、仕事を続けてきた事実や会社が変わっても通用する力(ポータブルスキル)に目を向ければ、自分ができることは必ず見つかります。

できることの棚卸しの具体的な手順は、次の記事で解説しています。

関連記事:「何もしてこなかった40代男性が今から仕事と人生を立て直す方法」 

できることを書き出したら、そこに次の職場で譲れない条件を掛け合わせます。続けられる条件は、次のような観点で書き出すと具体的になります。

観点自分に問いかけること書き出し例
関わる人の数と頻度1日に何人とどのくらいやり取りすると疲れるか日常的にやり取りする相手は3人程度まで
指示系統と裁量誰から指示を受け、どこまで自分で決めたいか指示を出す人が1人に決まっている
勤務時間と場所何時間、どこで働くと翌日に疲れを残さないか残業は月10時間以内、週2日以上は在宅
成果の見え方どのような形で成果が見えると手応えを感じるか制作物など、形に残る成果がある

自分と世間の良いところを見つけるコツは「大人だから人間関係の折り合いがつけられて当たり前」「みんなやっているから」など、広い枠組みの考え方にとらわれず、自分だけの基準で素直な気持ちを言葉にすることです。

書き出し例のように数字や具体的な状態で書いておくと、求人票や面接で条件を確かめるときの判断基準としても使えます。

運営者のキャリアの棚卸し体験記

運営者がWeb制作を学び始めたきっかけは、妻から勧められたことでした。これまで約10年間、建設業の管理職として働いてきて、さらにPCの操作にあまり自信がありませんでしたが、新しい分野にチャレンジするよい機会だと考え、未経験からWeb制作の学習を始めました。

学習を進めるなかで、自分の手でWebサイトを作り、学んだ知識や技術が成果として積み上がっていくことに手応えを感じました。

以前の仕事とは異なり、自分で制作に取り組み、その成果を目に見える形で確認できることが、運営者にとって働き方を考えるうえでの一つの判断基準になりました。

(5)大きな決断は体調が安定するまで保留する

退職や転職といった大きな決断は、体調が安定してからにしましょう。回復の途中では、判断の基準が「今の苦しさから早く抜け出したい」に偏りやすいためです。

ただし、決断を先送りできる期間には限りがあります。就業規則で定められた休職期間の上限と、傷病手当金の支給期間(通算1年6か月)を確認し、期限から逆算して判断する時期を決めておくと、焦らずに準備を進められます。

※出典:全国健康保険協会(協会けんぽ)「傷病手当金」

運営者

運営者は休職から2〜3か月後に退職し、経済的な事情から治療を続けながら再就職しました。しかし、再就職先の仕事内容などが合わず、約2週間の休職を再び経験しています。

再就職先の確定と持続的な働き方は別軸で判断すべきです。
それぞれに置かれた事情があるものの、できる限り持続的な働き方を選ぶほうが代えのきかない心身の健康に支障をきたすリスクを減らすことができます。

3.復職か転職か退職か|判断する6つの基準

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回復が進んだら、選択肢を比べる段階に入ります。ここで使うのは、休職中に書き出した消耗の原因と続けられる条件です。

6つすべてを満たす必要はありません。

満たさない基準の数よりも、どの基準を満たしていないかに注目すると次にやるべきことが見えてきます。

(1)主治医が就労可能と判断しているか

すべての判断の前提になるのが、主治医の意見です。

日常生活を問題なく送れることと、業務を遂行できることは同じではありません。厚生労働省の手引きでも、主治医の判断を受けたうえで、産業医などが職場で求められる業務遂行能力まで回復しているかを確認する流れ※ になっています。

※出典:厚生労働省 こころの耳「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」

ただし、医師との間にも相性があるかと思います。
話を聞いてもらえていないと感じる、説明に納得できないといった状態が続く場合は、ほかの医師の意見を聞くことも選択肢の一つです。

また、相談先を主治医だけに絞る必要もありません。会社の産業医、家族や信頼できる友人など、話せる相手を複数持っておくと、判断を一人で抱え込まずに済みます。

休職中は人と会う機会が減り、孤立しやすい時期です。相談先を意識してつくっておくことも、回復と立て直しの一部になります。

運営者

自分の場合、現実的に通院できる範囲に病院が1つしかなく、待ち時間が長いうえに会計の誤りもある病院でした。それでも家族に通院を付き添ってもらうなどして、なんとか治療を続けられました。

(2)消耗の原因が業務調整・配置転換で解消できるか

書き出した消耗の原因が、主に業務量や人間関係であれば、業務の調整や配置転換によって解消できる可能性があります。この場合は、環境を変えてもらうことを条件に復職する選択肢が有力です。

一方で、会議や調整業務の多さ、評価の仕組みなど、組織での働き方そのものが原因の場合は、同じ会社に戻っても根本的な解決は難しくなります。転職や働き方の変更も視野に入れましょう。

(3)会社に復職を支える仕組みがあるか

復職のしやすさは、会社の仕組みによって大きく変わります。次の点を就業規則や人事担当者に確認しましょう。

  • 試し出勤(リハビリ出勤)の制度の有無
  • 職場復帰支援プランの作成の有無
  • 産業医面談を受けられるか
  • 短時間勤務や業務制限から始められるか


こうした仕組みが整っている会社ほど、段階的に負荷を戻しながら復職できます。
制度として整っていなくても、個別に相談すれば対応してもらえる場合もあるため、まずは人事担当者に聞いてみることが大切です。

(4)復職後の働き方を具体的に描けるか

復職後の役職、担当範囲、関わる人が休職前とまったく同じであれば、同じ原因で再び消耗する可能性があります。復職後の1日の流れを、出社から退社まで具体的に思い描けるかを確かめましょう。

思い描けない部分があれば、そこが会社と話し合うべき点です。上司や人事担当者に、配置転換や役割の変更を打診する余地があるかを確認しましょう。

(5)収入と生活費の見通しが立っているか

判断の期限を左右するのが、お金の問題です。休職中の収入の柱は多くの場合、健康保険の傷病手当金ですが、支給額は給与の約3分の2にとどまります。

見落としやすいのが社会保険料です。休職中も会社に在籍している以上、健康保険や厚生年金の保険料の本人負担分は発生します。給与から天引きできない期間は、会社へ支払うよう求められるのが一般的です。

※出典:埼玉県「労働相談Q&A 休職中の保険料について」

傷病手当金の残り期間、社会保険料の負担、毎月の生活費を書き出し、何か月持ちこたえられるかを把握しておきましょう。

持ちこたえられる期間が短い場合は、期限が迫る前に家族と相談したり、使える制度を調べたりして、判断のための時間を確保することが大切です。

運営者の休職中の家計体験記

運営者は傷病手当金を受け取れましたが、もともとの給与水準が高くなかったため、それだけでは生活費をまかなえませんでした。そのうえ、休職中も社会保険料の本人負担分を自分で支払い続けなければならず、家計への負担は大きいものでした。
生活費が不足した際には、緊急小口資金を利用するなどでなんとかしのぎました。

振り返ると、回復のきっかけになったのは、退職して職場から離れたことと、次の仕事が見つかって家計に余裕が出たことでした。運営者自身の経験から、経済的な不安も心身の回復に影響する要因の一つだと感じています。

(6)転職先でも同じ消耗を繰り返さないか

転職を考える場合は、応募先が自分の続けられる条件を満たしているかを、求人票や面接で確かめます。会社を変えても、関わる人の数や指示系統、勤務時間といった条件が同じであれば、同じ消耗を繰り返す可能性があるためです。

条件を満たす職場が見つからない場合は、業務委託やフリーランス、在宅中心の働き方など、働き方そのものを変える方法もあります。

4.40代の休職中の選択肢別の進め方と注意点

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判断基準に照らして方向性が見えたら、選んだ選択肢に沿って準備を進めます。
同じ選択肢でも、手続きの順番を誤ると収入や社会保険が途切れる場合があります。ここでは、選択肢ごとの進め方と、つまずきやすい点を整理します。

(1)現職に復職する|職場復帰支援の5つのステップ

厚生労働省の手引きでは、職場復帰までの流れを5つのステップで示しています。会社側の手続きとして書かれているため、各ステップで本人が何をするかに置き換えて確認しておきましょう。

ステップ内容本人がやること
第1ステップ病気休業開始及び休業中のケア診断書の提出、休職中の連絡方法と頻度を会社と決める
第2ステップ主治医による職場復帰可能の判断会社に復職の意思を伝え、主治医に職場復帰可能の診断書を依頼する
第3ステップ職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成産業医や人事との面談で、業務内容・勤務時間・配慮事項を話し合う
第4ステップ最終的な職場復帰の決定決まった復帰日と就業上の配慮の内容を確認する
第5ステップ職場復帰後のフォローアップ定期的な面談で体調と業務負荷を報告し、必要に応じて調整を相談する

※出典:厚生労働省 こころの耳「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」

本人にとって特に大切なのは、復職後の働き方が決まる第3ステップです。この面談では、次の3点をセットで伝えましょう。

  • 休職前の働き方のどこに無理があったか
  • どの条件があれば働き続けられるか
  • 主治医の意見書に書かれた就業上の配慮

希望だけでなく、主治医の意見という医学的な根拠を添えると、会社も配慮の必要性を判断しやすくなります。復職はゴールではなく、第5ステップのフォローアップまで含めて、無理なく働き続けられる状態をつくる過程です。

(2)休職中に転職活動をする|就業規則と進める順番の注意点

休職中に転職活動をすること自体は、法律で禁じられているわけではありません。ただし、休職は復職を前提とした制度です。会社の就業規則に休職中の行動に関する定めがないかを、事前に確認しておきましょう。

また、傷病手当金は「仕事に就けない状態」であることが支給の要件です。面接や応募書類の準備ができる状態かどうかは、主治医と相談したうえで判断しましょう。

進める順番にも注意が必要です。内定が出る前に退職すると、収入と勤務先の社会保険が途切れた状態で転職活動を続けることになります。体調が安定し、主治医の了承を得られた場合は、在籍したまま内定を得てから退職の手続きに進むと、空白の期間を短くできます。

(3)退職して療養・再就職準備をする

退職を選ぶ場合は、退職日を決める前に、次の点を確認しておきましょう。手続きの順番によっては、受け取れるはずの給付を受け取れなくなることがあります。

確認すること確認先確認しておく理由
退職後も傷病手当金を受け取れるか加入している健康保険退職日の時点で条件を満たしていないと、退職後は支給されない
失業保険の受給期間を延長できるかハローワーク療養が長引くと、受給できる期間を過ぎてしまうおそれ
退職後に加入する健康保険加入している健康保険、市区町村退職翌日から切り替えの手続きが必要

このうち見落としやすいのが、失業保険(雇用保険の基本手当)の受給期間です。失業保険を受け取れる期間は、原則として離職日の翌日から1年間です。ただし、病気などで引き続き30日以上働けない場合は、ハローワークに申請すると受給期間を最長4年まで延長できます。療養が長引きそうな場合は、早めに申請しておきましょう。

※出典:埼玉労働局「受給期間延長の申請期限が変わりました」

運営者の退職体験記

運営者は休職から2〜3か月後に退職しました。長年勤めてきた会社への思いがあっただけに、怒りや悔しさなど複雑な感情がありました。

退職の手続きは家族がサポートし、最後の挨拶だけは自分で行いました。退職後も治療は続けましたが、職場から離れたことで精神的な負担が軽くなり、少しずつ落ち着きを取り戻すことができました。

5.休職中の40代が使える制度と相談先

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休職中や退職後の生活を支える制度は、知っているかどうかで家計の見通しが大きく変わります。ここでは、休職中の40代が確認しておきたい制度と相談先を整理します。

(1)傷病手当金|休職中と退職後の収入を支える給付

傷病手当金は、業務外の病気やけがで仕事を休み、給与を受けられないときに健康保険から支給される給付です。休職中の収入の柱になるだけでなく、条件を満たせば退職後も受け取り続けられます。協会けんぽの場合、主な内容は次のとおりです。

項目内容
対象業務外の病気・けがで仕事に就けない被保険者
支給開始連続する3日間の待期のあと、4日目以降の休業日から
1日あたりの支給額支給開始日以前12か月の標準報酬月額の平均÷30×3分の2
支給期間支給を開始した日から通算1年6か月
給与との関係給与が支払われている間は支給なし(傷病手当金より少ない場合は差額を支給)
退職後の継続退職日までに被保険者期間が継続して1年以上あり、退職日に受給中または受給できる状態であれば継続して支給

※出典:全国健康保険協会(協会けんぽ)「傷病手当金」

注意したいのは、いったん仕事に就ける状態になったあとに再び働けなくなった場合、退職後は支給されない点です。また、健康保険組合に加入している場合は、付加給付などで内容が異なることがあります。情報はネット上の解説ではなく、自分が加入している健康保険に直接確認するのが確実です。

運営者

運営者の家庭では、傷病手当金について調べた際、インターネットに掲載されている情報と相談窓口で説明された内容が一致せず、混乱しました。

最終的には無事に受給できましたが、この経験から、インターネットの情報だけで判断せず、加入している健康保険の窓口に直接確認することの大切さを実感しました。

(2)自立支援医療(精神通院医療)で通院費の負担を軽くする

精神疾患で継続的に通院が必要な場合は、自立支援医療(精神通院医療)を利用できる場合があります。認定されると、通院医療費の自己負担が原則1割になり、所得に応じて月ごとの負担上限額が設けられます。

申請の窓口は、住んでいる市区町村の障害福祉担当窓口です。対象になるかどうかは主治医に相談しましょう。

※出典:厚生労働省「自立支援医療(精神通院医療)の概要」、厚生労働省「自立支援医療における利用者負担の基本的な枠組み」

運営者の場合、長期的な通院の見込みがあることから自立支援医療を利用できました。
時間とお金を使うことなので複数回の通院見込みがある場合には、相談しておくと負担を軽減できます。

(3)リワーク(職場復帰支援)を利用する

リワークとは、休職中の人が職場復帰に向けて、生活リズムの構築やストレスへの対処などを練習する支援です。各都道府県にある地域障害者職業センターでは、うつ病などで休職している人を対象に、無料でリワーク支援を行っています。

項目内容
対象うつ病などで休職中で、主治医が職場復帰に向けた活動の開始を了解している人
費用無料
期間標準12週間(状況に応じて個別に設定)
内容生活リズムの構築、ストレス対処、リハビリ出勤、会社との調整

すでに退職している人や、主治医がまだ休養が必要と判断している人は対象外です。また、会社との調整も支援に含まれるため、復職を選ぶ場合に特に役立つ制度です。医療機関がリワークプログラムを実施している場合もあるため、主治医に相談してみましょう。

※出典:高齢・障害・求職者雇用支援機構「うつ病などで休職しており、職場復帰をお考えの方へ」、千葉障害者職業センター「リワーク支援」

(4)生活費が足りないときは生活福祉資金貸付制度を確認する

傷病手当金だけでは生活費が足りない場合は、市区町村の社会福祉協議会が窓口となる生活福祉資金貸付制度を確認しましょう。緊急かつ一時的に生計の維持が難しくなった世帯向けに、緊急小口資金が設けられています。

項目内容
貸付限度額10万円以内
据置期間貸付日から2か月以内
償還期限据置期間経過後8か月以内
利子・保証人無利子・保証人不要

※出典:厚生労働省「生活福祉資金貸付条件等一覧」

貸付のため返済が求められることが原則です。利用できるかどうかは世帯の状況によって異なるため、まずは住んでいる地域の社会福祉協議会に相談しましょう。

運営者

運営者の家庭では、新型コロナウイルス感染症の特例措置として実施されていた緊急小口資金を利用して、休職中の生活費をつなぎました。

なお、当時利用した特例貸付はすでに受付を終了しています。現在、生活費について相談する場合は、通常の緊急小口資金が対象になります。

(5)キャリアの相談はハローワークなどの公的窓口も選択肢の一つ

回復してキャリアを考える段階に入ったら、無料で使える公的な窓口から相談を始めると、費用をかけずに情報を集められます。

  • ハローワーク:職業相談、求人紹介、ハロートレーニング(職業訓練)の案内
  • 地域障害者職業センター:復職に向けたリワーク支援

離職中にスキルを身につけたい場合は、ハロートレーニング(職業訓練)も選択肢になります。受講料は原則無料ですが、コースによっては入校時に筆記試験や面接による選考があります。

運営者の学び直し体験記

運営者は2023年に派遣の契約が終わったあと、Web制作の学習を始めました。独学からスタートし、オンラインスクールで学び、再び独学を続けたあと、職業訓練に応募しています。

職業訓練は一度選考試験に落ち、引越し後に他府県で受け直して合格しました。職業訓練は無料で学べる一方、選考があり、カリキュラムも選べません。合わなければ別の学び方に切り替えてよいというのが、運営者の体感です。

6.40代の休職に関するよくある質問

(1)休職したことは転職先に知られる?履歴書に書く必要は?

休職中も会社には在籍しているため、職歴上は在籍期間として扱われます。ただし、入社手続きで提出する源泉徴収票の金額や、面接での質問によって休職が伝わる場合があります。

隠そうとして説明に矛盾が生じると、かえって信頼を損ねます。面接で聞かれた場合は、休職の事実、現在の回復状況、再発を防ぐために取り組んでいることの3点を簡潔に伝えましょう。

運営者の再就職体験記

運営者は再就職の面接で、適応障害によって休職し、退職した経緯を正直に伝えました。
結果、休職や退職の経歴を伝えたうえで採用されました。この経験から、過去の休職歴を隠すのではなく、現在の回復状況と仕事に対する前向きな姿勢を自分の言葉で伝えることが持続的な働き方に大切だと感じています。

(2)休職中に資格の勉強や副業をしてもいい?

資格の勉強は、主治医が問題ないと判断していれば、回復期の生活リズムづくりにも役立ちます。ただし、副業は慎重に考えましょう。

就業規則で休職中の就労が制限されている場合があるほか、傷病手当金は仕事に就けない状態であることが支給の要件です。働ける状態と判断されると、支給されなくなる可能性があるため注意が必要です。

(3)40代で休職を経験すると再就職は厳しい?

休職の経験があること自体で、今後のキャリアが閉ざされるわけではありません。

採用の場で問われやすいのは、休職したという事実よりも、現在働ける状態にあるか、同じことを繰り返さないための設計の観点から対策があるかどうかです。

運営者の再就職体験記

運営者も休職を2回経験しましたが、現在はフルリモートのフリーランスとして、Webの仕事をしています。やや変則的な方法でしたが、フリーランスとして案件を獲得するときに過去の休職歴が影響することはありませんでした。

また、以前の職場では仕事内容や人間関係に負担を感じていましたが、現在は在宅で仕事に取り組めるようになり、精神的にも時間的にも余裕ができました。

7.まとめ

40代での休職は、キャリアの終わりではありません。病気で休職した人の約半数は職場に戻っており、退職を選んだ人も、その後の働き方を自分で選び直しています。大切なのは、焦りから結論を急がず、回復、整理、選択の順番を守ることです。

回復の段階では休むことを最優先にし、体調が安定したら、消耗した原因と続けられる条件を書き出します。そのうえで、主治医の判断、社内で調整できる余地、家計の見通しといった基準に照らして、復職・転職・退職を判断しましょう。傷病手当金やリワーク支援、生活福祉資金など、使える制度を知っておくことも判断を支える材料になります。

まずは明日、就業規則で休職期間の上限を確認し、傷病手当金の支給開始日とあわせて、判断の期限をカレンダーに書き込むところから始めてみてください。期限が見えれば、残りの時間で何をすべきかが具体的になります。